サクッ。
その乾いた音を立てた瞬間、口の中に広がるのは単なる小麦とバターの味ではない。それは、明治・大正・昭和を駆け抜けた『日本の洋菓子近代化』の音だ。
コロンバン。「原宿スイーツ」の元祖であり、日本で初めて本格的なフランス菓子を伝えた伝説の店。だが、多くの人は誤解している。これを単なる『懐かしいデパートの贈答品』だと思っていないか?
否。これはお菓子ではない。
宮内省大膳寮員(天皇の料理番)であった創業者・門倉國輝が、パリの石畳を日本に再現しようとした『執念の建築物』である。
今回は、歴史を愛する数寄者(すきもの)たちにこそ味わってほしい、コロンバンの真髄を紐解く。

大正13年、パリの衝撃を皇室へ。
時は大正。若き菓子職人・門倉國輝(かどくら くにてる)は、渡仏したパリで衝撃を受ける。
『日本のお菓子は、まだお遊びに過ぎない』
本場のフランス菓子は、芸術だった。香り、食感、見た目、すべてが計算され尽くした総合芸術。帰国後、彼は大正13年(1924年)にコロンバンを創業。『宮内省御用達』の栄誉を授かることになる。
フレンチパイを手に取って見てほしい。ただの焼き菓子ではない。これは、当時まだカステラや饅頭が主流だった日本において、『バターを何層にも折り重ねて焼く』という、当時のハイテク技術の結晶だったのだ。

これ全部…食べていいんスか?
スペックの変態性:なぜ『フレンチパイ』なのか
歴史ファンなら、このパイの『断面』に注目せずにはいられないだろう。コロンバンのフレンチパイ、最大の武器は『層(レイヤー)』だ。
幾重にも折り重ねられたパイ生地。その一枚一枚が極限まで薄く、しかし存在感を保っている。そこに低温でじっくりと火を通すことで、バターの風味を逃さずに『サクサク』という、軽快かつ強固な食感を生み出している。
そして特筆すべきは、表面に散りばめられた砂糖の結晶(グラニュー糖)だ。
現代の軟弱なスイーツは口溶けばかりを追求するが、コロンバンは違う。ジャリッとした砂糖の歯ごたえを残すことで、パイのサクサク感との『食感のコントラスト』を演出している。これぞ、昭和モダンの粋(いき)。計算された無骨さである。

え、今、耳元で鳴った?
結論:これは『食べる教養』である。
もしあなたが、上司や知人への贈り物に迷っているなら、コロンバンを選ぶことは戦略的に正しい。なぜなら、ここには『語れる歴史』があるからだ。
『これ、ただのパイじゃないんです。天皇の料理番が創業した、日本初の本格フランス菓子店の味なんですよ』
そう添えて渡すだけで、その品は単なるカロリーの塊から、『知的な文化体験』へと昇華する。
もちろん、日曜の午後、自分ひとりで濃いめの珈琲と共に味わうのも、また一興。一口かじるたびに、大正・昭和の職人たちの熱気が、バターの香りと共に蘇るはずだ。
さあ、歴史をひとくち、いかがかな。

Tシャツで入る勇気がない。
宮内省御用達の技を、自宅で。
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