一保堂茶舗「お茶」 - 誰かに、自分に、いいもの贈ろう

一保堂茶舗「お茶」〜一服に、四百年の静けさを。

京都・寺町二条。町家の軒先から立ちのぼる香ばしい茶の香り。それが一保堂茶舗の風景だ。煎茶、玉露、抹茶、番茶――どの茶も、香りが立ち、余韻が深い。創業以来三百年近く、彼らが守り続けているのは「急がず、焦らず、茶を育てる」という哲学である。

一服に、心を整える。

一保堂の茶は、香りと旨味のバランスに特徴がある。飲み口は軽やかで、舌の上にふわりと旨味が広がり、喉を抜けたあとに甘みが残る。玉露は深く、煎茶はすっきり、抹茶は凛として芳香豊か。すべてに共通しているのは、“人を落ち着かせる味”である。どんなに時代が移ろっても、茶を淹れる所作と時間は変わらない。そのゆるやかな時間こそが、一保堂茶舗が届けている“味”であり、“文化”なのだ。

公式ページ（Amazon）を見る
 代表商品をAmazonで見る

商いの町で、茶を磨く。

一保堂茶舗の起源は、江戸時代中期の享保2年（1717年）にまでさかのぼる。初代・渡辺利兵衛が京都・寺町で「近江屋」という屋号の茶商を開いたのが始まりである。当時の京都は、江戸に政治の中心を譲りながらも、文化と教養の都として息づいていた。茶は武家の嗜みから町人の楽しみへと広がり、煎茶文化が盛んになる時代。利兵衛は宇治の茶農家と直接取引し、香りの高い煎茶を扱ったことで評判を呼んだ。幕末、茶の需要が武家や寺院だけでなく一般庶民へと拡大する中で、利兵衛の茶は「寺町の一保堂」と呼ばれ始める。屋号の「一保」とは、“一服で人の心を保つ”という意味を込めたもの。江戸から明治への激動期には、文明開化の波が押し寄せ、紅茶やコーヒーが新しい嗜好品として登場した。しかし、一保堂は流行を追わず、あくまで日本人の体に馴染む「旨味の茶」を守った。明治後期、二代目・渡辺嘉助は、茶の栽培から販売までを一貫して行う体制を整え、「宇治一番茶」にこだわるブランドへと成長させた。戦前・戦中は茶葉の供出や統制により苦しい時代が続いたが、戦後は「香りで癒す」ことを信念に、焼け残った店舗を拠点に茶の復興を始める。昭和30年代には全国の百貨店に出店し、京都の味を全国へと広げた。昭和40年には茶道家元への納入を正式に許され、抹茶の品質は「濃茶にも耐える」ものとして高い評価を得る。平成に入り、海外からも注目を集め、パリ・ニューヨークの日本茶専門店が一保堂の茶を扱うようになった。いまでは国内外の茶人や料理人が“和の旨味の原点”として一保堂の茶を選ぶ。三百年を超える時を経ても、寺町の工房ではいまも職人たちが茶葉の香りを鼻で嗅ぎ、手で揉み、音で火入れを見極めている。焙煎の音、茶の香り、火の色。そこに宿るのは、手の記憶と、静寂の技である。

公式ページ（Amazon）を見る
 代表商品をAmazonで見る

香りを、時間で磨く。

一保堂の茶づくりは、速さとは対極にある。職人たちは焙煎の段階を「音」で判断する。ぱちぱちと茶葉が鳴き始め、焦げる手前で火を止める。香ばしさを残しながらも青味を消さない絶妙な加減。それはデータではなく、五感でしか捉えられない世界だ。茶葉の香りは、時間が育てるもの。香りが立ち、味が落ち着き、最後に心を鎮める。その一連の流れを“茶の呼吸”と呼ぶ。機械では再現できないその呼吸を守り続けている。

公式ページ（Amazon）を見る
 代表商品をAmazonで見る

一碗の中の宇宙。

一保堂の茶は、見た目からして美しい。玉露の深い翠、抹茶の冴えた緑、煎茶の淡い黄金。湯を注ぐと立ちのぼる蒸気の層が、まるで霞のように揺れる。茶碗の中に映る光は、季節と時間を閉じ込めた小さな宇宙だ。茶葉が開く音すらも風情と感じさせる。茶を味わうというより、“景色を飲む”。それが一保堂の美学である。

公式ページ（Amazon）を見る
 代表商品をAmazonで見る

急須のある暮らしを、もう一度。

忙しない日常の中で、茶を淹れる時間を持つ人は減った。だが一保堂はそこにこそ可能性を見出している。ティーバッグやボトル飲料が主流となった今だからこそ、「自分で淹れる一杯の贅沢」を提案する。店舗では、客が自分で急須を使い、温度や時間を調整しながら茶を味わう体験型の喫茶を展開している。茶を淹れるという行為そのものを“リセットの儀式”として再定義しているのだ。香りを聞き、湯を注ぎ、茶を待つ。その短い時間が、スマートフォンよりも深く心を潤す。

公式ページ（Amazon）を見る
 代表商品をAmazonで見る